しんちゃお。
そろそろ雨季は終わりかけ、湿度はそれなりでも夜は涼しいホーチミンシティからくろまめです。
最近の街中は人出が完全に戻ったとは言えないよう。
ホーチミンシティ近郊で在宅勤務だったひとは出社拒否率が高めとか。たしかにもう出勤も面倒だし、コロナは怖いし、在宅でできるからええやん社員が一定数いるよね。
週末も外食よりは内食が多くなっているのかフードデリバリーが活況。でも運ぶ人が圧倒的に不足。混みあう時間帯だとデリバリーバイクがいなくて飲食店のほうからキャンセルされるとか。
ひとを運ぶGrab Bikeサービスは相変らずストップしたまま。バスも限定路線だけでほぼ走っていない。一方、車も不足しているのかGrab Taxiは料金が高騰、同じ距離でも時間によっては倍以上の運賃に。コロナ心配×交通費高くなるの二重苦。
都会はコロナが怖いし物価も高いしで失業して田舎に帰ったまま戻ってこないひと多数。
この先も人手不足が続きそうです。
というわけで経済活動自体は止まってはいないけど、外出は極力控えようかの空気が漂うホーチミン。子どもがワクチン接種前なので高島屋や大型モールには入れないというのも関係ありそう。
くろまめはワクチンうけた
さて、ぼっちひまくろまめは最近になって急にあわただしい。
なぜなら部屋と倉庫を探しをしてるから。
住んでいるアパートは今月末で賃貸期限が切れて、家賃が急にコロナ前に戻り400$値上がりする。半年前の更新時にも値上げ通知はあったけど、寛大なオーナーが配慮してくれてずっと値下げしたままでいてくれてた。
優しいオーナーさんの物件を出るのは悲しいけども、値上げとなれば貧民黄金生活のくろまめは退去せざるを得ない。
しかし夫の職業柄荷物が大変多い~!
シンガポールからの引越しでやみくもに詰め込まれた荷物も出てくる出てくる…。
安いホテル+倉庫を検討するも、両方合わせると思いのほかお高い…。
ゆえに荷物が入る程度の部屋探しを始めたところ、ロックダウン解除と同時に家賃はどこもかしこも軒並み値上がり。ひとは動いてないはずなのに仲介物件は激しく動きだし、株価も上がっているので、家賃はこれからも上がり続けるでしょう。
すでに月も半ば、もちろん心は焦っている。
安くて広くて安全で便利な場所にある部屋を探して砂漠を彷徨う夢をみるくらい内心はじりじりしてる。
果たして月末までに無事に退去ができるのか。Continue……
そんな中、とある物件のオーナーにある日突然連れて行かれた展示会。
そこでくろめは驚愕の光景を目にすることになる。
オーナーはベトナム人女性。
お誘いトークは「ちょっと温泉の展示会に行こうよ」だった。
え?ホーチミンに温泉があるわけ?
行ってみたらば大手不動産デベロッパーのリゾート開発セールス会。
え?え?温泉は?
なにこれーーー???
超絶バブリー???
ベトナム、バブルは終わっちゃいないのね?
そこには遠い昔に日本で見た光景が広がっていた。
オーナーと乗ったタクシーが大型展示会場前に到着。
降りたらすぐ目の前にキラキラ光る巨大なクリスマスツリー。ベトナムでこんな大きなツリー見たことなかったな。メルキュールのだってそこそこデカかったけど。
その隣には色とりどりのライトで照らされたメリーゴーランド。派手~!
会場手前の駐車場にはギンギラギンの超高級外車がずらーりと数十台。
シンガポールF1の時以来見る超高級外車の数々。
有名人でも大挙してるのかと思った。
この展示会は大金持ちしか来てないとか???
近所のアパートを2~3件見るだけと思って出てきた自分の服装といえば、中途半端に丈の短いしょぼくれたパンツにくたびれたタンクトップといつものビーサン。
場違い感が甚だしい。
進んでいくと案内するのは黒服よろしく全身真っ黒、マスクも真っ黒、黒ずくめの軍服を身に纏った警備員。ガラス扉を丁寧に開けてくれる。その丁寧さとは真逆に、会場に入るといきなりギラギラでむんむんする熱気。
ひゃー!なんじゃこりゃ!目がやられる!
華やかな胡蝶蘭が所狭しと飾られ、あちらこちらに置かれてるのはゴージャスなラメ入りの長いソファ。
一般家庭ではおよそ見ることが無いこの類のソファ。キャバクラかホストクラブか。
エレベーターにも絶対に入らなくて引越しの時に困るサイズ。
広い会場全体を見渡せば派手派手ゴージャスで埋め尽くされている。胡蝶蘭だって10本立てとかのボリュームじゃない。ひと鉢に少なくとも50本以上は入ってる。
セールス社員が揃って胸につけてる目立つ社名入りの大きなバッジ。
女性社員は上下黒のブーツカットのスーツに高すぎヒールとモリモリのロングヘア。男性社員も上下黒のスーツにカラーシャツ。
見ればほとんどのソファがセールス社員とお客さんでほぼ埋まってる。大盛況っぷり。
中央に大きなコーヒーカウンター。
商談が始まると白シャツスタッフがミネラルウォーターとストローを持って飛んでくる。
次にコーヒーを持って走ってくる。
胡蝶蘭や南国の草花に囲まれたコーナーには池まであり、大きな錦鯉が悠々と泳いでる。
会場内の壁際にはたくさんの本格的な出展ブース。
世界的チェーンのアイスクリーム店、花屋、ぬいぐるみ屋とコーヒーショップだけでも3店舗。シルクドレスブティック、ゴルフショップ。
お金持ちしか用はない感がすごい…サンダル履きの自分が場違いすぎていたたまれない。
そして圧巻がジオラマ。
ベトナム国内の各所に開発中のリゾート地ごとに分けられて設置された巨大なジオラマ。
ジオラマ好きとしてはたまらんな。模型博物館にもこのスケールはなさそう。
小さな日本家屋が並ぶジオラマもじっくりは見ていられない。
ジオラマの周りには次々とツアーコンダクターよろしくセールス社員がお客さんを引きつれて説明にやってくるから。隙間なくお客さんが立ち、その中心にはセールス社員。
彼らはジオラマのひとひとつにレーザーポインターをあてながら熱心にお客さんに説明をする。
会場いっぱいに設置された巨大なジオラマが5つ。
国内でこれほどまでにリゾートを開発してるの?すごいなベトナム。
次々に大勢のひとがやってきては次のジオラマに移っていく。熱心なのは社員だけじゃない。お客さんも熱心に説明に聞き入り、そして質問し、ひどく真剣だった。
見れば中二階にも商談ソファがたくさんあって、お客さんとセールス社員で埋まっている。すごい。
会場には熱気が溢れ、お金持ちとセールス社員の真剣勝負の様相。
一緒に行ったオーナーは20分ほど説明を聞いたあとに「温泉付きのヴィラを買う」と言葉を残してセールス社員との真剣勝負へ。
ジオラマでは小屋のように見える一番小さな安い物件でお値段6千万円…マジか。
くろまめ残されてポツン…いや帰りますけどもね。
一緒に座ってもベトナム語がわかるわけでもなし、当然といえば当然だけど、なんで連れてきた?
ああ、でもこの光景…たしかにみた。。。
遠い目をしてもうっすらとしか思い出せないほどの遥か昔。
この熱気、あの頃の日本とそのまんまおんなじ…。
日本中が狂ったように浮かれていた日々。
本当はオーナーには「買うのだけはとどまって」と言いたかった。
くろまめの年代だとバブルのころに親が買った別荘や大きな買い物のせいで、いまナウめちゃくちゃ苦労してひとがいるのだ。
建物は老朽化して、解体するにも大金がかかる。
大金をかけて更地にしたとしても廃れたリゾートの土地は売れない。
毎年修理維持費と税金がかかる。あの泡と消えたバブルのツケはこどもや孫が支払うことになるのだ。はじけたら負の遺産でしかない。
逆にバブル期に会社を清算して所有地を売り、資産を分散した賢い親をもつ友人は余裕の暮らし向きだ。
オーナー、本当にいいんですか?
あなたがどんなに長生きでも40年後は確率的に死んでるでしょ。
ホーチミンシティから近くはない、もちろん空港すら無いような田舎のリゾート地に別荘を買ってほんとにいいんですか?
犬井ヒロシ
買うのも売るのも自由だ~
そうだ自由なんだ!
この超絶バブリーな世界はいまベトナムにいるからこそ経験しているのであって、日本にいればこの先、生きてる間に経験することはない。
しかし泡と消えたあとの苦汁をなめた日本人にとって、ジオラマはちゃんと見たかったけど気持ちがざわざわする空間だった。
この超絶バブリーな世界。
あなたたちがこれから買う小さな6,000万円の家には、暇を持て余しておしゃべりしている華やかで数えきれないほどのセールス社員の給料や、巨大なクリスマスツリーや超高級外車のレンタル料や胡蝶蘭や錦鯉のお値段も含まれているのよ?海風にさらされるその別荘を10年後に修繕しますか。20年後はにぎわっていますか。クラブハウスやホテルは撤退しませんか。
大きなお世話か…好きなだけ買うがよい。
外に出てみると雨季も終わる季節なのにしとしとと雨が降り出した。
道路は渋滞し、タクシーも来ない。
とぼとぼと歩き出してはみたものの、やさぐれ感はマシマシた。
へんがっぷらい!(また会いましょう)
くろまめ
ビーサンだっていいじゃないの。
だって人間だもの。まめを。
ふんどしだっていいじゃないの。
だって人形だもの。押してよ!